最近、外部の法律相談サイトでちょこちょこ回答させて頂くことがあります。その中でよくみる法律相談の一つに、「自分のした行為は犯罪か?警察に逮捕されるのか?自首すべきか?」というものがあります。児童ポルノの単純所持だとか、自動車を運転していて木の枝にぶつかった気がするが警察に逮捕されるのかとか、ポイ捨てとか、誹謗中傷しちゃったとか。しかも数年前の話だったりするのです。たいてい軽微な犯罪類型です。
事務所や法律相談センターでの対面での相談ではめったにない類型なので、匿名で気軽に相談できるネット特有の現象なのでしょうね。
気持ちはとてもわかるのです。私も弁護士になる以前は、自分のやった行為が犯罪じゃないか悩むことが多かったもので(弁護士になってみると、いろいろ分かるのでそうでもないですが)。
しかし、私はなかなか回答がしづらい。いくつか理由があります。
①刑罰法規は処罰範囲がかなり広くできている
日本の刑罰法規はたいてい処罰範囲が広いので、たいていは犯罪になることが多いのです。ただ警察がいろんな理由で取り締まらないだけ、ということが多いのです。道路交通法のスピード違反が典型です。児童ポルノに関しても、これが犯罪なのかという事例がかなり多いです。だから犯罪ですかと言われれば犯罪ですとなってしまうことが多いのです。
②警察の運用が不明瞭
で、犯罪ならば逮捕されたり刑罰を受けたりするかというとそうとは限りません。そもそも警察が立件しないこともあるし、検察で不起訴になることもあります。警察の内部の体制不備で、そもそも捜査を始めない(始められない)ということもあります。
しかも、警察や検察は捜査上の機密や治安維持の要請から、不起訴処分の基準や警察段階の微罪処分の基準を公表していません。仕方がないとは思いますが、結果、捜査が開始され逮捕されたり起訴されたりするのかどうか、はっきり断言できないことがあります。
窃盗や薬物事犯など、刑事弁護をしていて日常的に接する犯罪類型だと、文献などにもおおよそ相場があるのですが、あまりにも軽微な犯罪だとそれもありません。
ということで軽微な犯罪でも、回答の多くが、「あなたのやったことは犯罪だが逮捕されたり処罰される可能性は低い。ただ逮捕されたり処罰されたりしないと断言できない」というものになります。これで納得して頂ける方はそれほど多くありません。
③相談者の方が事実を隠していることがある
結構この手の相談に回答すると、「質問文には前科前歴はないと書いたんですが、実はあるんです」とか「一回だけ誹謗中傷の書き込みをして、すぐ消しましたと書きましたが、実は数十回やっているんです。それでも大丈夫でしょうか」というように、質問文に重要な事実を記載されていない方が結構いらっしゃいます。
気持ちは充分よく分かるんですが、回答する方は大変です。新しい情報が出るたびにこれまでの検討結果を考え直さないといけないので。
④実はかなり専門的な分野である
相談者の方からすれば簡単に見えるかもしれませんが、軽微で身近な犯罪ほど法律学的には難しいものです。特に道路交通法や児童ポルノ禁止法は司法試験に受かったくらいではすぐに回答するのが困難なくらい法律学的に難解な分野です。
・・・というわけで、自分の行為が犯罪か?警察は来るのか?というネットでの相談には、なかなか私は回答がしづらいです。事務所や法律相談センターでの相談でならまあまあ回答が出来ますし、ある程度の回答を示す責任があるので回答致しますが、ネットの相談には回答義務があるわけではないので。
といっても、可哀そうな方だと思ってしまうと回答させて頂くこともありますが・・・